饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「どうやら、上手くいったようだねぇ」

 緑柱が、川を覗き込みながら言った。
 彼が持っていた、大きな饅頭がなくなっている。

「・・・・・・な、なな・・・・・・。どういうことですか」

 ようやく老神官が、きょろきょろしつつ、虎邪に聞いた。

 祭壇の上には、神明姫が寝かされている。
 無論その頭は、ちゃんと胴体に繋がっていて、涙の溜まった大きな目を、虎邪に向けている。

「ちょいと、竜神を騙したのですよ。竜神は、あの大きな饅頭を姫の頭と思って持ち去った。俺にはこの神明姫の首を刎(は)ねるなんてこと、できませんのでね」

 辺りを見回しながら言う虎邪に、老神官は驚いた顔のまま、がばっと身を乗り出した。

「な、何ということを! 竜神を騙すだなんて、そんなことしたら、後々どのような厄災が起こるか・・・・・・!」
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