地下世界の謀略
灰色の煙が辺りで浮遊する中で月は、瞼を開けた。
目の前が黒で覆われていたのは、アルトが目の前がフラッシュする瞬間、私の顔面を彼自身の胸で塞いでてくれたからだった。
「……っ、無事か?」
アルトも若干苦しそうに身じろぎして体を起こす。
一見顔にかすり傷があるだけのように見えたが、彼の背中に手を置いた途端、ぬめりとした感触が手の皮膚に広がった。
「っアルト!傷、が」
「……こんなの、対したことない。それより、琉達は……」
「あっ…」
そうだ、これだけの爆風。
私たちに直撃したわけではないので分からないが、今ので被害がないはずがない。
月は一気に青ざめた。
この近くで、子供たちが遊んでいたのだから。
(琉くん、楊くん、凜子ちゃん……!)
煙が収まっていくのと同時に月は駆け出していた。後ろですぐ、アルトの静止の声と足音が聞こえる。
勝手な行動は危険だとわかっていながら、私の足は止まらなかった。
────否、目の前のソレを視界に入れるまでは。
「……え、っ?」
"ソレ"はとても、歪で異形な、モノ。
『お前は"アルト"、か?』
気孔口から紡がれた機械音は、まるで私を誰だか認識できていないようだった。
唖然とする私に真っ直ぐマシンガンのような銃口が向けられたのにすら、固まるしかなかった。