地下世界の謀略
──────撃たれる。
そう思い、逃げろと信号がなっているのに、足が地面に張り付いて、動けなくて。
(嗚呼、もう終わりかも…)
そう死を感じ取った直後、ソレは後ろから聞こえた二つ程の銃声によって弾け飛んだ。
「─────っ馬鹿。逃げろよ」
苦々しくそう吐き捨てたのは、荒い息で銃を構えるアルト。
膝立ちをした彼が構える銃の口からは煙が出ている。もう一度撃たれたモノを見ると、見事に頭部のような位置に二つ、貫通していた。
(私がいたのに、)
標的が何かしらで遮られていても、彼は絶妙な距離感で確実に命中させるだけの腕があったようだ。
それに愕然としていると、機械のようなソレはガシャリと音を立てて脆くも崩れていく。
人間でいう目の部分は片方だけ、未だに赤い光が宿っていた。
「………っ、」
──もし、彼が射止めていなかったら私は。
今さらになって、恐怖という感情が背筋を凍らせる。
「っおい、」
「アルト……」
「なにしてんだよ…ほんとに」
傷つけられた背中を縮こませて歩いているため猫背のせいか、顔が近い。 恥ずかしいと思うよりも、足が震えて、立っているのも辛くて。
傷だらけの彼の胸に頭を預けてしまう。
「、っ!」
「……ごめん」
暖かさを感じることができたことに、ここまで安堵するなんて思ってなかった。
(嗚呼、よかった)
暖かい彼の体に、自分の生を感じられる。