地下世界の謀略
────あれから夜が明けた。
本堂に戻って琉たちの痛々しくも元気な姿を見た瞬間、彼女はそれこそ子供のように頬をたゆませ、気絶した。
急なことに驚いたが、あれだけおぞましいものを見れば、今まで平穏な暮らしをしてきた彼女にとってショックなものだろう。
とりあえず、あのまま帰るわけにもいかなかったので、理貴の好意に甘えて寝床を借りていた。
規則的に上下する胸。
彼女が正常に呼吸をしている証拠であるのに、自分の心臓はやけに騒がしい。
何を焦っているのか、自分らしくないと理貴にも言われたばかりであるのに。
理解不能な感情に混濁する。
「……アホくさい寝顔」
無防備に口を開いて、あどけなく寝入る彼女に心底腹が立つ。
(否、腹が立つのは己に、だ)
こんなあって間もないお荷物に、多少でも心を掻き乱されるなんてあまりにも愚かしい。
無造作にベットの横の椅子に腰かけ、乱暴に頭を掻いた。
「……」
────死体廃棄場で、迷子状態出会った彼女の手を掴んで駆け出したのは何故だろう。
自分は何故、今回も彼女の命を助けようとしただろうか。