二度目の恋
「怖い……怖い……愁、やめて!」
 美月は叫んだ。すると次の瞬間、ボートはバランスを失い、愁もバランスを崩して湖に放り投げ出され、その反動でボートもひっくり返って美月も湖に放り投げ出された。ボートはひっくり返ったままだった。美月は懸命に泳いでボートにしがみついた。
 落ち着き周りを見ると愁の姿はなかった。「シュウ?シュウ!」叫んだ。だが、愁の姿はなかった。「シュウ!シュウ!」美月はもう一度叫ぶと、突然目の前に愁が浮き上がった。
「よかった、無事だったのね」
美月が言った。
「見つけた……」
「えっ?」
「とうとう見つけたよ美月」
「なに?」
「湖の底、覗いてごらん」
 そう言うと、愁はまた水の中に潜った。「ちょっ、ちょっと!」美月は全く分からないままにボートから手を離し、水の中に潜っていった。
 水の中は暗く雲ってよく見えなかった。魚がいっぱい泳いではいた。愁の姿も消えていた。美月はもっとよく見ると、奥の、ずっと深くに青い光が見えた。
 空は曇っていた。その雲が少しだけ途切れ、日の光が湖に向けて射し込んだ。
 水の中は暗かったが、日の光が射し込むと徐々に徐々に明るくなっていき、奥の奥まで光が届いていった。すると何か物が見えてきた。そのものを見た瞬間、思わず美月は口を開けてしまった。空気が漏れて慌てて暴れて水の外に出た。すると愁も浮き上がった。
「ここにあったんだ!」
美月は興奮していった。
「うん」
「みんなが探してた。お社がここに、ここにあったんだ」
「美月、もう一度見よう!」
 美月は頷くと、また潜った。
 青い光が放っていた。大きなお社で、瓦の屋根に大きな柱が支えていた。すると美月と愁の周りに数多くの粒状の青い光が、お社に向かって落ちていった。その光を愁はよく見た。<妖精だ……>無数の妖精が、青い光を放ってお社に向かって泳いでいっていた。


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