二度目の恋
 玄関のドアを開けて外へ出た。原っぱのススキは揺れ動いている。直也はその場に立ち、ニヤリと笑った。「みつき~!みつき~!今日はいい天気だ。とても気持ちいい。雲もない、風もない、とても美しい満月だ。おまえが生まれた日を思い出すよ。とても、美しい月だった。ハハハ、逃げても無駄だ。待ってろよ。今、パパが行くからな」直也は大声で叫んだ。
 愁と美月は背の高いススキを掻き分けて懸命に走っていた。愁は美月の手をしっかりと握り、先頭を切っていた。
 直也は原っぱに入り込み、草を掻き分けて目を食い入るように二人を追った。美月は少し後れを取っていた。愁のペースについていけずに引っ張られ、躓(つまづ)きそうになりながら走っていた。愁はそんな美月に気づかずに手をしっかり握って、とにかく早く先に行こうとした。<急がなきゃ。彼奴が追ってくる。僕が美月を守るんだ>愁は何度もそう思った。綺麗な月が三人を照らした。鈴虫やコオロギなど様々な虫の鳴き声が盛んに聞こえる。直也は一束の草を掴むと、力強く掻き分けて二人に徐々に近づいていった。愁と美月も懸命に懸命に先を急いだ。直也も力強く二人を追った。愁は先を急ごうと気ばかり焦り、美月は愁のペースについていけず、足を引きずって躓き走っていた。直也のペースは速くなり、徐々に二人に近づいていった。愁は美月の手をギュッと握りしめて走っていた。
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