二度目の恋
 雪は降っていた。村は白く染まり始めていた。あの日と同じだった。私は山を下り、枯れ果てた薔薇畑を通り、美月の家に向かった。この村も変わった。私の家の隣にも家が出来、またその隣にも家はある。私の家から、美月の家が見えなかった。歩くたび歩くたび、人も車も通り過ぎる。今日はクリスマスイブだ。子供達は走り回り、大きいクリスマスツリーを飾る家もある。そして、家と家の間に空き地があった。ここは昔、美月の家だった。空き地には『立入禁止』と書かれた古ぼけた看板にロープが張られていたが、私はそのロープを潜り、中へと入った。それは昔と変わらない。焼き焦げて湿った木々や、ガラスの破片、焼き焦げた布団、綿の出ている熊のぬいぐるみ、何も変わってない、何故だ!その熊のぬいぐるみを手に取ると、私のサングラスの向こうにある目は、あの時の情景を写した。炎が、炎が渦巻く。家を取り囲み、ガラスは割れ、「キャー!」と女の叫ぶ声が聞こえ、「みつき~!」炎の中から、そう叫ぶ男の声が私の耳に轟かした。「やっぱりここか」その声に私は振り向いた。そこには高山さんがいる。また、私は熊のぬいぐるみを見つめた。
「何故、この土地がこのままに?あの時と同じく、破片や物が置いてある。いったい誰が、何のために?」
「俺がこの土地を維持した」
 私は驚き高山さんを見た。
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