二度目の恋
 キッチンの冷蔵庫の扉は開いた。中から光が漏れ、美月の顔にあたった。部屋に明かりはついていなく、美月の顔が浮いて見えた。コーラを取り出す。
「帰ってたのか……」
 男の声がして、美月は振り向いた。
「ええ……」
 男は、部屋の入り口に寄りかかり立っていた。腰にタオルを巻いて、裸姿だった。腹筋は割れ、胸筋もある。身長もそこそこはあった。そして二重で整っている顔立ちだ。美月は冷蔵庫の扉を閉めた。すると、明かりは消え、また部屋は暗やみに包まれた。その時、廊下に明かりがつき、また部屋にその光は漏れてほんのりと明るくなった。
「だれ~」
 女の声がした。廊下を歩いてくる音がする。すると、男の腰に腕が巻かれ、女が後ろから抱きつき、男に顔を寄せて口付けをした。
「俺の女だ」
 男は美月を見て言った。女は美月を見ると、歩き出して近づいた。
「あなたねぇ~セックスできないの~」
 男は笑って見ていた。
「何であんな気持ちいいの、嫌なの?」
 女は美月の顔を撫で回して言った。その姿を見ると男は嘲笑うかのように微笑み、静かに部屋を去った。女は男が去る姿を見ると、また美月に顔を近づけて言った。
「何で黙ってるの?私が怖い?何で敬生(たかお)は、あんたみたいな女と結婚したのかしら。私の方が体、いいのに」
 そして、女は美月の耳元で囁いた。
「あんたから、敬生を奪ってやる……」
 そう言うと、薄笑いを浮かべて美月の頬にキスをして部屋を出た。美月はその場に動けないまま、全身に震えが籠もったが、コーラを持った手はその震えを免れなかった。
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