二度目の恋
 その時、愁はゆっくりとコップを手に持ち、そっと口に付けて、一気に飲み干した。「よくやった!愁!」竹中は手を叩き、喜び言った。ガン太と芳井も手を叩いた。唯は一人心配して「愁ちゃん、大丈夫?」何度も繰り返して心配した。そして竹中は、タバコに火を付けた。一つ吹かし、もう一つタバコを吹かした。吹かし終わると、竹中はそのタバコを摘み、愁に差し出した。「吸うか?」竹中は鮮やかに笑って言った。「たけちゃん!」唯は怒った口調で、叫んだ。すると愁はタバコに手を出し、口に含んで一口吸った。「愁ちゃん!」唯が叫んだ。その時、愁の様子はおかしくなった。タバコを持っていた手は止まり、口元が震え、目を白黒させて、一気に咳き込んだ。それと同時に口の中に含まれた煙は一気に吐き出され、ガン太や芳井の顔の辺りに充満し、空気と共に天井に上昇した。その光景に、竹中が大笑いした。続いてガン太も芳井も笑った。唯は少し微笑んだ。愁はみんなに笑われ、少しムッとしてまたタバコに手を伸ばして口に銜え、マッチを擦って火を付けようとした。それを竹中が横から奪った。「もうやめとけ。お前はまだ無理だ」そう言い、愁から奪ったタバコを口に銜えて火を付け、一つ吹かし、もう一つ吹かした。そして竹中は愁の肩に手を置いた。「お前には、根性がある。亨に似た根性。一途な根性だ。お前は恵子ちゃんを守り、全てを愛して生きろ。いろんな喜びを知れ、いろんな悲しみを知れ、いろんな苦しみも知ろ。生きることへの励み、楽しさ、人への思いやりや優しさを持っていくことが、お前への使命だ」竹中は微笑んで愁を見「今日から、お前は俺達の仲間だ」言い、またタバコを一つ吹かした。
 芳井が静かにカードを配り始めた。配られたカードを、竹中とガン太と芳井は手に取り、愁もそっと手に取った。爽やかな顔をしていた。唯はその顔を見て安心して、台所に戻った。
 そしてまた、ゲームが再開された。
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