二度目の恋
「でも私は嫌い」
 美月は愁の言葉に安心して、強がった言葉を吐いてしまった。
「なんで?」
 愁は、不思議に聞いた。
「こんな目、誰もいないじゃない。みんな、外人女だって馬鹿にするもの」
「外人?」
「ママが、アメリカ人なの」
「ううん、綺麗だよ。僕は好き」
 愁は美月の言葉を素直に聞き、素直に答えた。
「本当?」
 美月に笑顔が戻った。その時、美月の背後に小さな人影が過ぎった。愁はその人影を見て、何か思い立ったかのように美月に言った。
「美月、目を瞑って」
「なんで?」
「いいから」
 愁が言うと、美月は目を瞑った。<果たして、美月に見えるだろうか>愁は不安だった。美月の目に手をあてて、こう言った。
「これは、神様の誓いだよ。これから見る全てを信じる?」
 美月は少し戸惑ったが、頷いた。
「僕を信じる?」
 美月は頷いた。
「自分の声を信じる?」
 美月は頷いた。
「想像して!」
 美月は頷いた。愁は美月の目から、手を退けた。
「目を、開けていいよ」
 美月はゆっくりと、目を開けた。
 小さな妖精が、行進しながらやってくる。数えられないほど、大勢だ。湖全域から、美月を歓迎するように集まりだした。皆足元を揃えて行進し、二人の周りに集まって、一斉に止まった。愁は驚きに満ちていた。これほど凄いものが、見えただろうか。果たして美月は見れただろうか?美月を気にし
「美月……」
 呼んだ。
「何が起こったの?」
 美月は首を傾げていた。美月には、この妖精にパレードが見えなかったのだ。美月にはただの湖だ。そのことは、愁にも分かった。でもどうしても、美月に妖精を見せたくて、もう一度美月にいった。
「もう一度目を瞑って、祈るんだ。自分の声を……自分の思いを……自分自身を……信じて……想像して!美月は美しい湖にいるんだ……」
 愁は見続けた。そして一息置いて、静かに口開いた。
「目の前の花を信じる?目の前の木を信じる?想像して……ここは、今まで触れたことのない、自然があるんだ……僕の目の前に見える物は、みんな生きてるんだ……僕は、その中にいるんだよ……美月と一緒に……僕達以外の人達が、この岩の周りに駆け寄って、僕らを歓迎している……」
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