二度目の恋
「ピンク?」
「ピンクの薔薇……この薔薇の花言葉を知ってるか?」
「ううん?」
 愁は首を横に振った。
「愛の誓いだ」
「愛の……誓い?」
「そして美しい……」
「パパは、なんでピンクなの?」
「昔の話だよ」
「昔の話?」
「ああ、初恋の話だよ」
「初めて。パパの恋の話」
 愁はにこやかな顔で亨を見た。亨は少し照れ臭そうに髪の毛を掻いていた。愁は、まだ経験した事ない話に耳を傾けた。亨の恋の話に、とても興味があった。
「愁とちょうど同い年。パパが十二歳の時だ。パパのクラスに転校して来た女の子がいてな、学校一の美人だったんだ。もちろんすぐに学校の人気者になったよ。この手の届かないような美人の彼女にパパな、一目惚れしてしまったんだ」
「一目惚れ?」
「敵も多かったよ。性格も良かったしな。だけど彼女はパパのことなんて気にも止めなかった」
「パパは、その子に告白したの?」
「努力はしたよ。努力はしたんだがな」
「諦めたの?」
「彼女には好きな子がいたんだよ」
「でも……」
「学校一の美男だ。その美男はパパの親友でもあった。パパな、そいつに『彼女が好きなんだ』って言えなかったんだよ」
「何で?言えばいいのに」
「負けると思ったからだよ。でもそいつパパのこと察して協力して来た。『俺は大丈夫だからお前、がんばれ』って。そして一輪の薔薇を渡された」
「バラ?」
「ピンクの薔薇だ。そいつは『魔法の薔薇だ』って言ってたけど。『この薔薇にかかった呪文は、一生解けない』って、その薔薇の花言葉は愛の誓い、愛を誓い合った天使は一生離れることはない」
「じゃあうまくいったんだ」
「パパな、その薔薇とその親友の勇気をもって彼女の家に行ったんだがな、やっぱりなかなか踏み出せなくて、パパの勇気がなくて……」
< 8 / 187 >

この作品をシェア

pagetop