二度目の恋
ガン太が言うと
「ねえ、そうよね。恵子ちゃん」
 ガン太を気に止めずに、続けて静江は言った。
「え?あ、うん」
 恵子はあまり気の這った、返事ではなかった。
「静江さん!恵子さんに失礼ですよ」
 唯が叫び言った。
「唯ちゃん、別にいいのよ」
 恵子はそう言うと、少し黙り考えた。そしてまた口開き、美月に聞いた。
「ねえ、美月ちゃん。橘亨っていう人知らないかしら。美月ちゃんの村で前、事故に遭って亡くなったの」
 美月は少し考えて、顔を傾げた。恵子は美月を見、美月に変なことを聞いてしまった自分を振り返った。
「あ、ああ、いいの。いいのよ。ごめんなさい。知らなくていいのよ。変なこと聞いちゃって、ごめんね。今日は美月ちゃんの歓迎会だもんね。美月ちゃんは、好きな食べ物は何?」
 恵子は信じられなかった。もう亨の死から三ヶ月近く過ぎていたが、その死が未だ事故死だということに、頭で整理出来なかった。


「おまたせ~」
 唯が台所から、食事を持ってきた。
「お台所を勝手にかりました~はい、ピラフ」
 そう言い、それぞれの席に置き始めると、
「お前は、ピラフしか出来ないのか」
 芳井が言った。
「だって、得意なんだもん。はい、ヨッシー。大盛りにしといたから」
 唯が言った。
「お、今日は優しいね」
「いつもでしょ。はい、愁」
 唯は愁の前にも置いた。
「唯兄ちゃんのピラフ、美味しいんだよ」
 愁は美月に言い、ピラフは美月の前にも置かれた。
「ほんと?」
 美月は一口食べた。
「美味しい」
 最高の笑顔を見せた。
「よかった~美月ちゃんの口にあって」
 唯はみんなに配り終え、席についた。
「美月ちゃんは、お父さんと二人暮らしなの?」
 竹中が聞いた。
「はい」
 美月は答えた。
「あら、お母さんは、どうしたんだい?」
 静江がピラフを口に含ませながら聞くと、芳井は慌て
「ちょ、ちょっと静江さん!」
 唯が叫んだが
「ママは……いや、母は亡くなりました」
 美月は冷静に答えた。その美月の冷静さに芳井と唯は少し驚きもしたが、安心感も取り戻した。
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