二度目の恋
「あら、ごめんなさい。で、いつお亡くなりになったの?」
 静江は聞いた。
「はい、三ヶ月ぐらい前に、事故で……」
「お気の毒に……」
 静江が言うと
「お父さんのお仕事は?」
 恵子が聞いた。
「私もよく分からないんですけど、父はいつも『みんなが幸せに慣れる仕事だ』『村を良くするための仕事だ』って、言ってます」
 恵子は少し考え込んだ。その様子を竹中が気づき
「恵子ちゃん、どうした?」
 聞いた。
「ん?いえ……別に……」
 ハッキリとした答えは、返ってこなかった。恵子は黙り込み、その後の言葉もなかった。その様子を、竹中だけが見ていた。
「そうだ!美月ちゃんも、明日のお祭りに来なさいよ。愁ちゃんと一緒に来るといいわ」
 静江は突然叫び、愁も大きく頷いた。
「あ、あの~でも……」
 美月は急に元気なく、俯いた。
「どうしたの?」
 静江が聞いた。
「服が……」
「服?あら、何でもいいのよ」
 言いながら美月を見ると、シワクチャの白いTシャツに白いスカートはいていた。今にも擦り切れそうで、汚れがかなりこびりついたような古びた服装だ。
「分かった!お姉さんが今夜作ってあげる!」
「あ、でも、一日じゃ……」
 美月は戸惑った。
「いや、作るわ」
 そう言うと、静江は立ち上がり
「じゃあ、早速作るわ!」
 そう叫びながら張り切って、部屋を出ていった。
「何だ、彼奴は」
 ガン太が言った。
「静江さんらしいね」
 唯が笑いながら言うと、みんな笑いながら頷いた。その後も、みんなで美月を囲って、楽しい会話と笑い声が夜遅くまで続いた。
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