もう春は来ない
「それで?」
「はあ?ソレデ?じゃねえだろ、人が死んだんだっつうの!」
コイツはいつも言うことが暑苦しい。
「つっても、人はいつか死ぬもんさ」
僕はいつも冷めている。
「ま、そりゃそうだけどさ……、ていうかお前、せっかく野球やってんだから、志村拓哉の伝説ぐらい勉強しておけよ!」
「はいはい、気が向いたらな」
「気が向いたらじゃねえよ!ったく、なにがはいはいだ!気を向かせろっつうの!」
だって。
コイツはただ、野球に夢中で。
ただ僕は、そんなコイツをからかうのが唯一の楽しみだっただけなのに。
「つうか、死んだ奴に未練なんて持ってんじゃねえよ!今を生きろよ?」
「そうだよな……って、こらてめえ!死んだ奴だとお?志村拓哉は、俺の中で永遠に生きてるんだあ!」
「あはは、そりゃまるで亀仙人じゃねえか!」
……なんて。
そんな話で盛り上がってたからだ……。
そんなことを言ってたからだ……。
きっとそのせいだ。