女王の密戯
茶田は大城の写真をテーブルに置いた。何故そのとき刑事を辞めなかったのか。一時は辞めようと思った。だが辞められなかった。
理由なんてわからない。
恐らく、刑事を辞めてしまえば自分の人生はそれで終わると思ったのだろう。何もやることがなくなってしまえば、呆けたような人生を送るしかなくなる。
それが本能的にわかっていたから辞めなかったのだ。
そして代わりに長年吸っていた煙草をやめた。

そして未だにこんなふうに刑事を続けているのだ。

茶田は大きく息を吐き出しながらもう一度写真を手にした。写真を眺めるだけで犯人がわかれば苦労などしない。

写真をコーヒーカップに持ちかえたところで固定電話が静かな部屋に鳴り響いた。そして何コール目かで留守電に切り替わる。

『……紗綾です。何度もごめんなさい。優輝の七回忌はこちらで手配します。あの、出席出来るかだけ……いえ、何でもないです。お仕事……』

時間が足りなかったのか、言葉の途中で彼女の声は途切れた。

あれから六年もの月日が流れているというのに、今も息子の、優輝の眩しいほどの笑顔は頭から離れない。そして、それを包み込む妻の紗綾の微笑みも。








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