女王の密戯
「申し訳ありませんが、今日もお邪魔させて頂きますね」

「そういうお話なら、私ではなく中里監督に仰って下さい」

紅華はそれだけ言うと、では、と頭を軽く下げて茶田達の前から去っていった。その後ろを荷物を抱えた公佳がついていく。そこで初めて気付いたが、紅華は自身の荷物さえ手にはしないようだ。
芸能人というのは殆どがそんな者ばかりなのか。
茶田は自分には考えられないことに小さく息を吐いた。

「芸能人て、普段どんなことしてるんですかね?」

由依の小さな呟きを茶田の耳は逃さなかった。確かに、彼らはどんなふうに過ごしているのだろう。
彼だって自分と同じ「人」であるというのに、何故か違うと認識してしまう。それは彼らが広い世界で生きているからなのだろうか。

茶田は撮影所に入っていく紅華の後ろ姿を見ながら彼女の普段の生活を想像してみたがそれは無駄なことで、一切何も思い付くことはなかった。

「わからないなら訊けばいい、か」

茶田はぼそりと独り言を呟いた。







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