女王の密戯
「随分と挑発的だよな」

茶田は白い息を吐きながら撮影が行われている建物を見詰めた。これから重要なシーンを撮影するとのことで茶田達は監督直々に外に出るように言われたのだ。
そんなことをしなくても映画の内容に外に漏らしたりしないのに、と溢したのは寒そうにしている由依だ。

確かに茶田達は映画の内容が気になって此処に毎日訪れているわけではないし、そもそもそんなものには微塵も興味はない。だが撮影スタッフからしてみればそんなのが本当かどうかはわからないのだろう。

映画の重要な部分をインターネットなどで晒されてしまえば観客は激減するとでも思っているのだろう。茶田はそんなくだらないことに労力を使う暇などないと中里に言ったのだが彼は頑固としてそれを聞き入れなかった。
そのため、こんな寒空のなかで撮影が終わるのを待つ羽目になったのだ。

「……何処かで時間でも潰すか」

撮影が終わるまで、なんてどれくらい時間が掛かるかはわからないし、中里にもそう言われた。体のいい厄介払いなのかもしれないが、ここは大人しくしているしかないのだ。

確実に怪しい人物がいるわけでもないのに何度も足を運ばれ迷惑がられているのは言われなくとも空気でわかる。それならなるべく物事は穏和に済ませ、足を運ばせてもらわないわけにはいかない。

「お腹も空きましたよね」

由依が嬉しそうに笑い、茶田の腕に自分の腕を絡ませてきた。ちらりと三浦の方に顔を向けたが三浦はそれを気にしている様子はない。



< 54 / 70 >

この作品をシェア

pagetop