女王の密戯
女王の囁きともうひとつの殺人
「えらい騒ぎですね」

にやけたような口に煙草を挟んだ男が参ったように呟いた。表情と口調が合ってないように思えるが、それは彼の口許が元から口角が上がっているせいだと茶田は知っていた。

「生野警部」

茶田がその名を呼ぶと生野は苦笑いをしながら首を横に振った。

「やめて下さいよ、茶田先輩」

生野は茶田より確かに階級は上だが元は茶田が彼の先輩なのだ。とはいえ、自分より階級が上の人間に堂々とタメ口などきけないのが警察という組織だ。

「じゃ、お言葉に甘えて生野さんて呼ぶよ」

茶田が言うと、生野は昔みたく生野でいいです、やけに真面目な顔で返してきた。一見軽さのある風貌をしているにも関わらず、彼が至極真面目な男だというのを茶田は知っていた。

「殺されたの、女優だって?」

茶田が訊くと、生野は真面目な顔のまま頷いた。

「また八王子署管内なので間違いなく増員かかりますね」

生野は茶田が先輩ということを重んじてか敬語で伝えてきた。

「在庁の順番でいくと……」

「辻木班ですね」

「厄介だな」

茶田が言うと、生野は苦笑いを溢した。確かに、とそれに同意する。
辻木班は捜査一課でも優秀な班なのでうかうかしてると簡単に出し抜かれ、それは生野みたいに出世を狙うものとしては面白くない存在なのだろう。



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