瞳の向こうへ
「ん?」


携帯が振動した。


とりあえず音がない世界にいても携帯は最新のスマホ。


いまの時代にはホント助かる。


手話だけではいくら慣れてる俺だってキツイ。


手話は真面目に


携帯は本性むき出しに。


『どこにいんの?女子が喋りたいってさ』


きましたよ。


面倒くせえなあ。


『その様子じゃ女の子からのお誘いね』


その通りでございます。


『女子苦手なんで』


『なんで?』


『知ってるじゃないすか』


『まあ知ってるけど、青春をもっと楽しまないと』


『俺の青春は……誰よりも早く終わってますよ』


ため息混じりの手話を返した後携帯を強く握りしめる。


『OK!今すぐ行くから待ってて』


自分を偽って生きてくって……。ま、これも一つの生き方。


『今は後ろにひたすら進んでいくのもまた人生の経験だよ。でも、いつか行き止まり、回り道もなくなる時が来る』


『貴重なアドバイスありがとうございます。さっさと仕事してきます。でも、回り道は自分で作るのもまた人生ですから』


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