瞳の向こうへ
駅からここまでそれほど時間はかからないんだった。


クソ!暑さに慣れてるはずなのに、フラフラしてしまう。


やはりここは来るべきではないのか。


熱中症と思われないように足取りを軽くして中へ入った。


潤子先生からどこの病室かは聞いている。


後は俺次第……。


…………俺次第なんだけどなあ。


周りが俺を見ているように見えるのは気のせいか?


……俺が全て悪いんだ。


…………全部俺が……俺がーー。


人の気配がして振り向くと、潤子先生が笑っていた。


『行かないの?』


いきなり本題か。


これに関しては俺はとことん弱気になってしまうから何を言われてもどうしようもない。


『元気ですって伝えてください』


『そろそろあなたが言うべきだと思うけどなあ』


『俺は……もういいんですよ』

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