神隠しの杜
少女は残りのせんべいをすべて食べ最後に緑茶で流し込み、ゴミをコンビニ袋に纏め花火一式をもう片方の手で持ち立ち上がった。



「裏手でやろ。ここね、裏手に水道もバケツもあるし」

「よく知ってるね」

「だって、行くとこない時に神社でお世話になったもん。ほらぁ」



熊野明日香に手を引かれ裏手に回ると、確かにそこには水道とバケツがあった。持っていたピンクの大きな薔薇のついた黒い籠バックから、マッチ箱とろうそくを取り出し手際よく火をつける。



「この棒の先にねぇ、火つけるんだよぉ」

「こう?」



見よう見まねでやってみると、ぼっと先が燃え鮮やかな色の光の花がばちばちと音を立てながら咲いた。



「手は離さないで。終わったら、水の入ったバケツにつけとくの」

「……花火、っていいな。綺麗だ」



思わず口元がほころんだ彼岸花に少女は思い出したように言った。



「名前ないんだよね?」

「?あるぞ、彼岸花」

「確かに名前だけど、それ花の時でしょ〜私が決めていい?」

「構わないが……」



人間と言うものが面倒だなと思いつつも彼岸花は頷くと、熊野明日香は少し考えこう答えた。



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