身勝手な恋情【完結】

緩いくせのある黒髪。細く通った鼻筋。薄い唇。すらりとした、無駄な贅肉なんてひとかけらもついていない痩躯をいつも白いシャツで包んだ彼。

冴え冴えとした印象がある三白眼を、普段は茶色のフレームの眼鏡で隠している。

もしかしたら伊達眼鏡なのかもしれない。


社長は快活なタイプの人ではないし、むしろ愛想はないし、いやどっちかっていうと怖い。

低体温の……例えて言うのなら、蛇っぽいっていうか。

美形なんだけどひどく冷たい感じがして、社内でも社長が笑ったところなんて誰も見たことがないくらいなんだ。


そんな彼を補佐するのは副社長で、だから私たちは副社長の言うことさえ聞いていればよくて……。

社長とどうこうなるなんて、考えたことすらなかった。


そういえば、副社長はあのパーティーの夜、途中で姿を消していたような気がする。

彼がいればきっと、社長が社員に手を出すなんてことにはならなかっただろう。

社長と違って副社長はいたって常識人だし、常々、社長が暴走しそうな時はブレーキを掛ける役目の人だから……。




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