身勝手な恋情【完結】
だから、私が社長とああいうことになったのはたまたま偶然が重なっただけ。
主役のくせにパーティーが面倒くさくなったらしい社長の視線の先に、私が一人でいただけだ。
言葉一つ交わしたことはなかったけれど、王様にとっては、目の前にいる女が下僕1だろうが下僕2だろうが、さして違いなんかないんだから。
そうだ。
やり逃げされちゃったかもしれないけれど、今日たとえ顔を会わしたところで、社長は私に見向きもしないだろうし、実際忘れちゃってるかもしれない。
あの美しい世界がみっしりとつまっている頭脳に、私の入る余地なんてあるはずがない――。
「櫻、はよっ!」
「うわっ?」
青天目ビルヂングを目前にして、いきなり後ろからドスンと体当たられて、よろめく私。
そのまま前のめりに倒れそうになったところを、腕をつかまれ引き寄せられた。