身勝手な恋情【完結】
「こんな風に待ち伏せするのはやめて。困る」
「櫻、お前さ、色々勘違いしてるんだって」
まるで私が一人でヒステリーを起こしてると言わんばかりに、彼は笑って首を振る。
彼はもともと専門学校の先輩だったから、私のことを苗字で「櫻」と呼んでいた。
付き合う前も、付き合っている間も、そして別れた今でも、親しげに。
ああ、イライラする。
何も変わらない和明に、胸の奥がチリッと焦げるような気がして、思わず顔を歪めていた。
「は? 誰が勘違いしてるって? 冗談でしょう?」
別れた原因を私の勘違いのせいにしようとする根性が許せない。