身勝手な恋情【完結】
今朝は、和明に足止めされたせいで自分のペースを乱されてしまった。
社長のことといい、あいつのことといい、どうしていっぺんにこういうことが起きるんだろう……。
もしかして日頃の行いが悪いんだろうか?
そんなことを考えながら、他の会社の顔見知りの人に挨拶しつつ、エレベーターに乗り込む。
「何階ですか?」
エレベーターの入口付近に立つ黒髪スーツの知的な男性が、柔和に微笑みながら私に目線を送る。
彼は大きな封筒を持っていてそこには「翡翠社」と書かれていた。
「12階お願いします。ありがとうございます」
軽く会釈をし、上昇していく数字をぼんやりと眺める。