身勝手な恋情【完結】

都内の一等地にあり、なおかつ歴史も古いこのビルには、1フロアにたいてい1つか2つ、会社が入っていて、たとえばアクセサリーメーカーだったり、食品輸入会社だったり、出版社だったり、歯医者だったりで、まとまりがあるようでまったくなく、面白い。

たまに移転するとかで空くこともあるけれど、人気の物件のわりには、いつまでたっても空き物件になっていることもあるし……

入居者を決めるのはこのビルのオーナーだと聞いたことがあるけれど、いったいどんな条件で入居者を募集しているんだろう。


そんなことを考えつつエレベーターを降り、ピカピカに磨き上げられた廊下をつっきり、毎日通っている職場へと向かう。


『高槻デザインスタジオ』


事務所のドアにつけられた金色のプレートを見ると自然と背筋が伸びる思いだ。


ずっと憧れていた高槻蓮。

あんなことになっちゃったけど、その仕事に対する思いは変わらない……と思う。

うん。だから大丈夫。なんともない……。


ゆっくりと深呼吸をしてから、ドアノブに手をかけた。



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