身勝手な恋情【完結】
腕に力を込め、不安定に立つ彼を引き寄せると、思いのほかやすやすと、蓮さんは私の腕の中に納まってしまった。
彼の髪の中に指を差し込む。
柔らかく見えて、案外こしのある黒髪は、とてもいい匂いがした。
「お前と抜けた打ち上げの夜。一人でいたくなかったけど誰でもよかったわけじゃない」
「……」
「あの夜、お前のこと、なんとなく見てて……人が好さそうで……ずるがしこくなさそうで……。素朴に見えて……まぁ、ただそれだけだけど。あの夜はそういう人間と一緒にいたかった」
「何が……」
「父親から祐に連絡があっただけ」
「――」
「17のときに家を出されて、15年無視してたくせに……会いたいってさ。もちろん会わないけど」
そして蓮さんは、まるで猫みたいに私の鎖骨のあたりに頭をこすりつける。