身勝手な恋情【完結】
朝のミーティングには少し時間があるとは言え、職場内でそういうことを話すのはさすがにはばかられた。
声を押さえながらも、しっかりと抗議したけれど、当の本人はあっけらかんとしたものだ。
発言の主は私の仕事上の先輩で、元中学の同級生。尾崎和美。
同級生といっても、1年生の時に同じクラスになったっきり疎遠だったのだけれど、十年ぶりにここ高槻デザインスタジオで再会し、それから一気に親しくなったんだ。
「いい男だったじゃない」
「もうっ……!」
椅子に座ったまま近づいてきた彼女のグラマラスな体を肘で押しかえすと「じゃあランチのときに聞かせてもらうわ」とまた私と背中合わせの自分のデスクへと戻っていく。
はぁ、まいった……。
まさか見られていたとは……。
なんだかまた憂鬱な気分にかられ、キーボードの上の手が止まってしまった。
そうやって数秒、ボーっとしていると
「――櫻さん、頭の後ろ、くちゃくちゃになってるよ」
と、隣の席から同僚の声。