身勝手な恋情【完結】
「えっ?」
後頭部に手をやると、確かにくしゃくしゃになっていた。
指ですこうとしたけれど、からまってしまっている。
きっと和明に体当たりされたときにもつれちゃったんだ。
ばかっ……和明のばかっ……!
心の中でののしりながら机の上の時計を見ると、8時30分。45分からのミーティングには十分時間があった。
「ちょっとトイレで髪をといてきますね」
一言周囲に断ってから、バッグの中からポーチをつかんで事務所を出た。