身勝手な恋情【完結】
フロアの端にあるパウダールームに入ると、珍しく一人だった。
ポーチからつげ櫛を取りだし、鏡の前で髪をとかす。
あごにギリギリ届かないストレートのボブヘアーは、髪色は違えども中学生のときから変わらない。
「はぁ……」
鏡の中の顔を見て、がっくりくる。
パーマもロングもショートも似合わないから、10年経ってもちんちくりん。未だに学生に間違えられることもあるし、大人の女性としての色気がとことん欠けているのが自分でもわかる。
でもだからと言って、どうしようもないし……。
いやでも、もう少し私に色気があったら――
女としての魅力があったら、あれっきりだった社長との関係は変わっていたのかもしれない。
「――馬鹿みたい」
思わず笑ってしまった。