身勝手な恋情【完結】
草介さんにタクシー代を借りて、部屋に戻る。
案の定……というか。
鍵はマットの下に置かれていたけれど、蓮さんの姿はなかった。
何かメモでもないかと探したけれど、テーブルの下のくずかごには、何かを書いてぐしゃぐしゃと塗りつぶし、握りつぶされたメモが残っていただけ。
きっと彼は今晩戻らないだろう。
私から逃げたくなったのか
仕事なのか
それとも知寿さんに呼び出されたのか、わからない。
ただ漠然と、蓮さんとはダメなのかもしれないと、そんなことを考えていた。
私はもちろん蓮さんが好きだ。
絶対に別れたくなんかないけれど、私はどうやっても蓮さんにとって100%都合のいい女にはなれない……
なれるもんならなりたいけど、なれそうにもない。