身勝手な恋情【完結】
『忘れ物をしたの。とても大事なもの……』
彼女の声色に、スウッと体中の体温が冷える気配がした。
「ええ。さっき掃除をしていて見つけました。そちらの住所教えてください。着払いで送りますから」
出来るだけビジネスライクに、笑顔を作って答える私。
彼女は蓮さんに言づけて、なんて絶対に言わないだろうって、確信があった。
なぜなら彼女のターゲットは「私」だからだ。
彼女と話してよくわかった。
彼女は私を「煽って」いる。
私を怒らせようとしている。
顔が見えないからなおさら、彼女が電話の向こうでどんな顔をしているのか想像しただけで、はらわたが煮えくり返りそうになったけれど、ぎゅっと拳を握ってそれをこらえた。