身勝手な恋情【完結】
祐さんの後ろに、まるで影のように入口にもたれるようにして、社長が立っていたから。
「ああ、蓮。どうしたんだ。下で待ってたんじゃないのか?」
「寒い……」
しんと静かな部屋に響くハスキーボイス。
シャツの上に大きめのカーディガンを羽織った彼は、体の前で腕を組んで不機嫌そうに眉をひそめる。
「だったらわざわざ降りてこなくても、車の中で待ってればいいのに」
「戻ってこないから上がってきたんだ。メシ食え、メシ食えってうるさいくせに、くだらない無駄口叩いて待たせるな」
「わかった、わかった。悪かったよ……」
苦笑する祐さん。
だけど私は、なんだか身の置き所がなくてソワソワしてしまった。