身勝手な恋情【完結】
耳を澄ませたけれど祐さんの声は聴こえない。
少し遠くで話しているのかもしれない。
どうしよう。もう帰っちゃおうかな。私がここにいる必要はないだろうし……。
無言で自分のデスクに戻りPCを落とし、バッグを持つ。
「じゃあ、お先に失礼します」
椅子に座って、ぼんやりと窓の外に視線を向けている社長に頭を下げ(もちろんリアクションはない)、事務所を出た。
ちなみに祐さんはフロアにはいなかった。
どこ行ったんだろう……。
そしてエレベーターが到着しているのを待っていると、コツン、と背後から足音が響く。
「――祐さん? あっ……!」
てっきり副社長だと思った私、息を飲む。
なんで……?