好きなんだ…。

「うん…」

マジか~
俺のファーストキスは冬斗なのか?!
くそー、昨日のこと何も覚えてねぇ…
風呂上がるまでは眠くならなきゃよかった…

「はぁ、まぁいいさ。
冬斗…昨日のことはすべて忘れろ。
いいな」

「うん、分かった…」


「これで一件落着かな」

蕾は二人の間でクスクスと笑った。



俺のファーストキス……

秋斗は帰り道でも少しどんよりしていた。

「そういえば兄さん、
プリン買ったけど食べる?」

「食べるーーー!!」

「秋斗テンション高くなった!」

兄さんて単純。
僕も兄さんとキスしたのはショックだったけど
中学の時にもぅファーストキスはしちゃってるからね
今思えば、あまりショックじゃかったな。


「冬くん…?」

誰かが帰り道で冬斗に話しかけた。

「っ…、み…水樹…」

冬斗のとても驚いた顔に
秋斗は驚いた。

「なぁ、冬斗。
誰だ?そいつ」

「僕の中学の時の元カノ…」

「はぁ!?
冬斗、彼女なんていたのか!?」

「嘘…!?」

元カノという言葉に
蕾まで驚いた。

「兄さん、蕾ちゃん、
ちょっと外してくれるかな」

「お、おぅ」

「うん」

秋斗と蕾は
少し離れた電柱の影で二人の様子を見た。

「久しぶりだね。
元気だった?」

「うん、でも水樹。
中二の時海外に引っ越したんじゃ…」

「うん。引っ越したよ。
でも、今は私だけ親戚の家で
お世話になってるの」

「そっか」


そんな会話を電柱から見てる二人。

「ねぇ、冬斗って彼女いたんだね」

「あぁ。俺も今知った。
冬斗、
彼女がいるなんて
一言も言ってなかったんだけど」

「なんで?」

「さぁ」

「ていうかさ、
元カノの人凄く可愛いね~」

冬斗の元カノこと"水樹"は
髪はつやのある黒のセミロングで
目はぱっちり二重。
身長はやや小さめで
とても可愛らしい。

中一の頃から冬斗と付き合い出して
中二で親の転勤により海外へ。
それで、二人はやむを得ず別れたらしいが
秋斗は何も知らず、悠々と中学生活を満喫していた。

「くそ~、
彼女できるのは俺が先だと思ってたのによ。
先こされるとは…」

「へ~、先にできるって自信あったんだ~」

「…っ。ま、まぁな」

「ふぅ~ん」

「な、何だよ」

「べっつに~」

蕾は笑いながら
冬斗の方へと行った。

「じゃ、冬くん。またね」

「うん、また…」


「あの子、可愛いね」

蕾が冬斗の顔を除きこむようにして言った。

「うん、可愛かったよ…
今も…昔も…」

冬斗の悲しそうな顔に
蕾は少し胸が苦しくなった。

「なんで、彼女がいるって言わなかったんだ」

秋斗が手を腰にあてて
不満そうな顔で歩いてきた。

「だって 兄さん、
自分が先にできると思ってたと思うから。
ガッカリさせないようにと秘密にしてた」

「…」

「図星…」

蕾が秋斗の耳元でからかうように言った。

「蕾!てめぇ」

「きゃ!あはははっ」

冬斗の周りを逃げまくる蕾を
秋斗が追いかける。
それを見て、冬斗が笑顔になり笑う。

こんな日常がずっと続けばいいのに…



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