Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
(この勝負、私が勝つわ)

 レティアになんか、負けたくない。

 ジョーンは曲が終わると、ジェイムズと手を組んで一段上にある王妃の椅子に腰を下ろした。

 大広間にいる客人たちを眺ながら、どうやってレティアが挑んできた戦いに勝てるかを考え始めた。
        









 今日のジェイムズは心配性だ。

 何かあるのではないかと、不安になるくらい。レティアに愛想を尽かし、ジョーンに戻ってきたのか。

 新しい女くらいいるだろうに。ジェイムズに抱かれたがっている女は、数多くいるはずだ。ちょっと愛の言葉を耳元で囁けば、夜の相手などすぐに見つかるはずだ。

 ジョーンの身を案じ、傍にいたがるジェイムズがジョーンには鬱陶しく感じられた。

 午後六時になると、ジョーンは散歩に出かけた。供の人間は、ごく最小限にした。

 もっと連れて行くようにジェイムズが心配していたが、ジョーンにとって多くの人間に聞かれたくない内容を話す予定だった。

 ジョーンはケインとウイリアム、それに話をしたい当の相手であるジェームズ・ダグラスを連れて、散歩に出かけた。
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