Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 空はオレンジに色になり、太陽が下に傾いていた。城の壁に阻まれて、太陽がどこまで傾いているかわからなかった。

 中庭では、他に散歩や休憩をしている貴族が数組いた。城に戻ろうとする組もいれば、まだ談笑を楽しんでいる組もいた。

 じきに晩餐の時刻となる。早めに話を纏めたいとジョーンは思った。

 ジョーンは後ろに視線を送った。二十フィートほど後ろから、ケインとウイリアムが従いてきていた。あまり近くには寄らぬように、ジョーンが指示していた。

 ケインには聞かれたくない内容だったからだ。レティアを苦しめるように、ダグラスに命じる姿を、ケインには見られたくなかった。

 きっと悪魔に身を売ったような酷く醜い顔をしているに違いない。

 ジョーンはダグラスと肩を並べながら歩いていた。

 手入れの届いた芝生が、青々としていた。時より清々しい風も吹くが、ジョーンには心地よい風とは思えなかった。

「手短に話を纏めましょう。長々と余計な話をする気はないの。いいわね」

 ジョーンは前を見つめていた。緑の葉がついた木が馬車道沿いに三本ほど植えられているのが、視界に入っていた。
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