Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「今の話は、ダグラスと私だけの秘密よ」

 ダグラスの耳元で囁くと、ジョーンはケインとウイリアムに向かって歩き出した。

「ケイン、城に戻るわ」

 ジョーンは話が終わったと、ケインに教えた。ケインもジョーンに近づいてくると、ジョーンの背後に従いた。

「陛下、ダグラスといったい何のお話を」

「噂話を聞いただけよ」

「陛下、本当にそれだけですか?」

 ケインの口調は厳しかった。

(何を話していたか、ケインに気づかれているの?)

 ジョーンは足を止めて、ケインの顔を見た。

「ケインは私が噂話を聞いてはいけないと言うの?」

「違います。変なお考えをしていないかと心配しているだけです。お気を悪くされたのなら、申し訳ありません」

 ケインが頭を下げた。以後、ケインからの質問は途絶えた。

 ダグラスの陽気な話を聞きながら、ジョーンたちは城の大広間へと戻っていった。
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