Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ケインの目がいつもより細くなっていた。青い眼球が半分ほどしか見えない。眉も吊り上っているようだった。

「失礼を承知で入りました。国王陛下のもとに一通の手紙が届き、内容を耳にしたので王妃陛下にご報告をと思いまして、急ぎ参上しました」

 ケインが怖い顔のまま、ジョーンの背後で足を止めるとお辞儀をした。

「ジェイムズに届いた手紙は、どんな内容だったの?」

「クライシス伯爵夫人が亡くなったそうです」

 レティアが死んだ。

(ダグラスの仕業ね。意外と早く動いたのね)

 ジョーンの顔が自然と緩んだ。鏡を通してケインの冷たい視線に気が付き、ジョーンは喉を鳴らして視線を鏡から外した。

 口の中に大量の唾液が染み出してきた。ジョーンは周りに音が聞こえてしまうくらい音をたてて飲み込んだ。

 ジョーンは嬉しかった。レティアがこの世からいなくなったのだ。ジョーンの命を狙い、王妃の座を奪おうとしていた女が姿を消した。

 レティアとの勝負。ジョーンが勝利したのだ。今すぐに、大きな声で笑いだしたい気分だった。
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