Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「ローラ、すぐにお悔やみの文を書くわ。用意して頂戴」

 ローラの短い返事が後ろから聞こえてきた。足音が遠ざかり、ドアの開閉音が聞こえた。

 ジョーンは視線を鏡に戻した。

 ケインがまだ冷たい目で、ジョーンを見ている。ジョーンに何か言いたそうだ。言いたいけど、言い難くそうに顔をしかめていた。

「エレノア、少しの間だけ廊下に出ていて」

 返事をしたエレノアが、小走りで廊下に出て行った。

 部屋には、ジョーンとケインだけとなった。ジョーンは、立ち上がると赤いガウン姿のままケインの横を通り過ぎ、ソファに腰を下ろした。
        







「二人きりよ。ケイン、何か言いたいんでしょ」

 ケインが、ジョーンに横を向いたまま動かなかった。怖い顔をして、ケインが鏡に映っている己自身を睨んでいるように見えた。

(何か言ってよ。黙っていられるほうが嫌だわ)

 ジョーンは襟元を掴んでいる手に力が入った。ケインが何を考えているのか、わからない。ケインの喜怒哀楽が読めなかった。

「なぜ、驚かれないのです?」

 ケインの低い声が耳に入ってきた。
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