Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ダグラスと関係ない言い合いをする時間すら、勿体ない。

 野心と欲望の塊の男に、忠誠心などあるはずがない。

 ただ、地位向上のために、伝手になりそうなジョーンに媚びているだけだ。それがわかるからこそ、ジョーンには暗殺を命じて欲しくなかった。

 ダグラスの返答から、ジョーンが指示したのは間違いないだろう。次に頼む時は、ケインに命じるようにジョーンにお願いする必要があると感じた。

「嫉妬に狂う男は情けないと聞きましたが」

 言葉を切ったダグラスが、眉尻をあげると意味ありげな笑みを浮かべた。ケインはダグラスから視線を逸らすと、木の前で足を止めた。

 こんな男の口車に乗ってはいけない。野心と欲望の塊しかない男に、ケインの心など絶対わからない。ジョーンとの深い繋がりを理解できるはずがない。

 ケインは胸の中で言い聞かせた。

「ダグラスは僕を怒らすのが得意なようだ」

 一瞬だけ笑顔を見せた後に、ケインはダグラスを睨んだ。ダグラスに背を向けると、城に早足で戻った。
        
< 129 / 266 >

この作品をシェア

pagetop