Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ジェイムズがローラやエレノアたちに部屋から出て行くように命令した。

 二人が部屋から出て行く足音の他に、誰かが入ってくる足音も耳に入ってきた。

「ジョーン、今日からお前の執事のピットとメイドのキャサリンだ。余のところで長く働いていた優秀な者たちだ。心配しなくていいからな」

 ジョーンは後ろに振り返った。ソファの後ろに立っている二人が頭を下げた。

 執事のピットは長身で、生真面目そうな雰囲気だった。四十歳代後半くらいだろうか。頬がこけており、きりりとした目が神経質そうに見えた。

 メイドのキャサリンはふっくらとした身体つきだった。

 四十歳代前半といったところか。額と頬にはくっきりと深い皺が入っていた。突き出した胸と腹で着ている服がきつそうに見えてしまう。

 肌色は白く、青い瞳が印象的だった。

「私には、もう充分すぎるほど、執事もメイドもおります」

「一人や二人ぐらい増えても、構わないだろ」

 ジョーンは執事から目を離して、ジェイムズの顔をした。ジェイムズがジョーンの隣に立つと、腰に手を回してきた。

(ジェイムズにとって優秀で忠実なだけでしょ? 私には苦痛以外の何も与えてくれないわ)
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