Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ピットとキャサリンも朝から増えた。もしかしたらジェイムズが用意したのか。

 随分と嫉妬深い面を最近は見せるようになった。おかげでケインは、しばらくジョーンと過ごせていない。

 レティアの暗殺は、間違っていたのかもしれない。

「皆に話しておかないといけないの。来月、ジェイムズと一緒にパースに行く予定が決まったわ」

 ジョーンの声が低かった。ジョーンの表情が暗かった理由が、ケインにもはっきりとわかった。

 ジェイムズのとの同行が決まったから、ショックを受けていたのだろう。

 ジェイムズがパースに行けば、ジョーンとゆっくり夜を過ごせると思っていたが、そうもいかなくなった。

 ケインは驚きの声を上げたいくらいだったが、後ろにいるキャサリンに怪しまれるような行動は慎まなくていけない。動揺で歩調が乱れないようにした。

(パースに行くなら、暗殺のチャンスかもしれない)

 ケインの頭の中で何かが弾けた音がした。ロバート・グレイアムの顔が脳裏に浮かぶ。ダグラスの笑みも加わった。
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