Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「ねえ、何だか怖い話をしているの?」

 ダグラスの隣に座っていた女の一人がケインのソファに座ると、ケインの腕を引っ張りながら質問した。

「悪戯を少し。驚かせたい人がいるんです」

 ケインは女に微笑んだ。ダグラスが女の背中を寂しそうに見つめていた。

「絶対に、同じ部屋にいる女性は驚かせないでください」

 ケインは低い声を出した。真剣にロバートたち三人を見つめた。

「ええ、そんな真似はしませんよ。目標は一人だけだから」

 ロバートの言葉を聞きながら、ダグラスは楽しそうにケインの顔を見てきた。

 ケインは懐から四つの袋を出すなり、ダグラス、ロバート、リーゼル、アルバートの前に置いていった。

 テーブルの上に置かれた袋は、重々しい響きを立てる。四人とも金が入っているのは瞬時にわかるようだ。

 リーゼルとアルバートが目の色を変えて、袋に飛びついた。

 ダグラスとロバートが、ケインの顔を見つめた。

「いろいろと準備をするのに、必要になるだろう? 使ってくれ」

「詳しい段取りが決まったら、お知らせします」

 ロバートが袋を自分の腹の中に隠すと、ケインに微笑んだ。

 話にひと段落つくと、ジュリアとキーラがスコッチと食事を持って階段を上がってきた。
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