Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 エレノアも負けまいと、言葉を返した。

 ピットは根に持つタイプの男だった。神経質で、急な予定変更にすぐに対応できる性格ではなかった。

 念入りに脳内でシュミレーションした行動から逸脱されるのが大嫌いだ。

 エレノアはピットに対し、真逆の性格だった。何にでも柔軟な対応をできる女性だ。臨機応変に行動できる。

 だからといって根無し草ではない。きちんと一本の芯があり、絶対にそこは曲げたりしない。

 ジョーンはエレノアの性格が気に入っていた。だからイングランドから連れてきたのだ。

「近くで剣術の稽古中です」

 エレノアとピットのやり取りに皆の視線が行っている中、ローラがすっとジョーンの横に並んで小声で教えてくれた。

「貴方たちの計画だったの? それに知っていたのね」

 ずっと近くにいた二人だ。ケインとの仲を気づいていて、知らない振りをしていたのだろう。

「ピット、いい加減にして頂戴。貴方の小言は聞いていて腹が立ちます。ここで気分転換がしたいわ。キャサリンと一緒にスコッチの用意をしてきて」

 ジョーンは声を低くした。不機嫌な顔を見せると、ピットは口を閉じて深々と頭を下げた。

 キャサリンも頭を下げてから、ピットと一緒に城に戻って言った。他に従いてきたメイドたちにも、テーブル用意やその他の雑用を命じて、この場から離れさせた。

 ジョーンと一緒に残ったのはエレノアとローラの二人だけにして。
< 162 / 266 >

この作品をシェア

pagetop