Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-

　ジョーンは廊下に出ると、キャサリンの死体が目に入った。

　ドアのところに立っていたアルバートが、廊下に出たジョーンを確認すると、すぐに部屋のドアを閉めた。何をするつもりなのだろうか。

　逃げるなら、廊下を走っていくべきだろうに。ロバートたちには、まだやるべき仕事があるのか。それとも窓から逃げるつもりなのだろうか。

　ジョーンには、部屋のドアを閉めた意味が皆目わからなかった。

　キャサリンの遺体が壁に寄りかかるように座っていた。

　大きく目を開き、恐怖に怯えている表情をしていた。着ている茶色の服は血を吸い込んで、黒く染まっていた。

　すぐ横に、赤い裾が見えた。裾から見えた塊を目で追っていくと、血のついた頬を下にして倒れているピットがいた。

　ピットも目を開けていた。ピットの身体から流れ出た血で、すっかり黒ずんでしまった絨毯を見つめたまま、動かなかった。