Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 嬉しそうにしているダグラスの顔を、ジョーンは見逃さなかった。

(摂政になりたいのね。男って生き物は、本当に野心ばかりで嫌だわ)

 ジョーンはダグラスに背を向けると、ローラを先頭にして歩き出した。

「ケイン殿、あとは頼みます」

 ダグラスの大きな声が背中からした。

「騎士として、責任ある行動をお願いしますよ」

 続けてダグラスが小声で囁いているのが聞こえた。

 ジョーンは振り返って、ダグラスとケインを見た。だが、二人とも何事もなかったような涼しい顔をしていた。

 ケインが騎兵の前に歩み寄り、ダグラスがジョーンに近づいてきた。

「まだ他に下手人が残っているかもしれません。私がお供しましょう」

 ダグラスが笑顔を見せた。ジョーンは前を向くと足を止めた。

「下手人がまだ他にいるのなら、私はケインと離れるのが不安ですわ。戻ります」

 ジョーンは方向転換しようとした。すると、ダグラスがジョーンの肩を掴んだ。

「大丈夫です。ご安心ください。ナイトの称号はなくても、剣に自信はあります。必ずや、王妃陛下をお守りしましょう」

(下手人は三人だもの。もう襲われないわ)

 ジョーンはローラとエレノアの部屋に向かった。
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