Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「着替える間だけ、仕切り板を立てるわ」

 ジョーンはダグラスの顔を見た。ダグラスもジョーンを見ると、頷いた。

 エレノアが荷物の山から仕切り板を出した。暖炉に近い位置に仕切り板を立てて、ダグラスから見えないように着替える空間を作り出した。

 ローラが桶を出してくると、暖炉の前にあった椅子の上に置いた。大きなボトルから水を桶に流し込んだ。重たさでローラの細い腕が震えていた。

 ジョーンは手に持っていた短剣を、折畳まっている毛布の上に置いた。

 エレノアが籠に入っている新しいガウンを出すと、椅子の背に掛けてタオルを濡ら始める。

 ローラもタオルを濡らすと、ジョーンの髪を拭き始めた。血で固まっている髪の束を丁寧に拭いていく。続けてエレノアもジョーンの左側に立つと、顔を拭き始めた。

 瞳を閉じて、身体が綺麗になっていくのをジョーンは待った。

 手も足も、身体についたジェイムズの血を拭き取るとジョーンはガウンを脱いだ。

「血だらけのガウンは、捨てていいわ」

 床に落ちたガウンを見ると、ジョーンははっきりと告げた。ジェイムズの血がついたガウンなど、もう見たくなかった。
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