Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「私は平気です。ヘレンが気を失っているので、この場を離れるのが心配で」

 エレノアの声を聞いて、ジョーンは安心した。エレノアが傷を負って、動けない状況ではない。

 ヘレンが気を失っているのは心配だが、エレノアが無事で良かった。

「ヘレンは、僕が運びましょう。エレノアも廊下へ」

 ケインの手がジョーンから離れた。ドアの前まで来ていたケインが、また暗い室内に入っていった。

 ケインがヘレンの前に立つ頃には、ローラとエレノアがジョーンの傍に来ていた。

 三人で廊下に出た。廊下は天井にあるランプで部屋より若干明るい程度だった。

 足音が聞こえたので、ジョーンは左側に視線を送った。顔を真っ赤にして走り寄ってくるウイリアムが見えた。

 ジョーンの左側で足を止めると、呼吸を激しく乱しながらお辞儀をした。

「大きな物音が聞こえたのですが、大丈夫ですか」

「ええ。荷物が倒れてきたの。怪我はないわ」

 ジョーンは部屋に目をやった。ウイリアムは首を伸ばして、暗い室内を観察した。

 ウイリアムは一歩二歩と前に出ると、室内の様子を見ようと大きく目を開いた。
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