Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「怪我はしてないわ。ケインこそ、怪我は?」

「僕も平気です」

 ケインが手を差し出した。ジョーンはケインの手を掴むと立ち上がった。
        
 ジョーンはすっかり肌蹴てしまったガウンを整えると、腰紐を結びなおした。荷物が散乱した室内には、九人の人間がいた。

 部屋の隅でがたがたと振るえ、小さくなっているローラに、室内の中心部あたりで、ヘレンを守るように覆いかぶさっているエレノア。

 積みあがっていた荷物の下敷きになったダグラスと、それを探す騎兵の四人たちに加えてケインとジョーンで合計九人にだった。

「一度、部屋から出ましょう」

 ケインがジョーンの手を繋いだまま、廊下へと歩みを始めた。

「エレノア、ローラも廊下に出なさい」

 ジョーンは振り返ると、二人の顔を見た。ローラが勢いよく顔を上げると、すぐにドアに向かって歩き始めた。

 エレノアが動こうとしなかった。

「エレノア、大丈夫? 怪我をしているの?」

 ジョーンは廊下に行こうとする足を止めた。手を繋いでいたケインも、一緒に足を止めた。

 エレノアが顔を上げた。
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